【連載】 委員長 往復書簡 (1)

倉敷と能登島。瀬戸内と日本海。遠く離れたふたつの場所で、ふたつのクラフトフェアが、時を同じくして誕生しました。それぞれのクラフトフェアを率いるふたり、宮井宏(フィールド オブ クラフト 倉敷実行委員長)と、有永浩太さん(ガラス作家。能登島クラフトフェア実行委員長)が、クラフトフェアについて想いを語る、「往復書簡」。だいたい月に一度の連載、はじまります。

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有永浩太 様

こんにちは。フィールド オブ クラフト 倉敷 実行委員会(以下「FOC」)・実行委員長の宮井です。
有永さんとは2回お会いしています。1度目は2016年の7月。岡山市内で開催された有永さんの個展の際に、FOCの事務局となっている僕の職場にお越しいただきました。本がお好きで、立ち寄られた「スロウな本屋」さんのご近所だったという、全く偶然の流れでした。個展には残念ながらうかがえなかったのですが、作品を幾つか拝見し、その技術の高さとセンスの良さに魅了されました。その時購入したぐい呑で、おいしくお酒をいただいています。2度目は、4か月後の11月。「灯しびとの集い」の会場で、偶然にばったり出会いました。あれだけ人のいる中ですから、縁があるとしか言いようがありません。

僕と有永さんには、いくつか共通点があります。まず、お互いに1978年生まれであること。同じ年月を重ねてきた同士のような感覚が勝手に芽生え、僕にはこれが一番グッときます。そして、僕はFOCの実行委員長を、有永さんは石川県で能登島クラフトフェア「のて(のとじま手まつり)」の実行委員長を、それぞれ第11回から務めることになったこと。そんな有永さんだからこそ、いろいろお話をうかがってみたくなりました。

まずは自分の話からはじめたいと思います。僕は25歳から、父親が一人で営む小さい不動産屋を手伝いはじめました。今では9人ほどの働く会社になりましたが、目の届く範囲で地道に仕事をしています。5年ほど前から本業のかたわら雑貨屋をはじめ、クラフトを取り扱うようになりました。その繋がりで第10回展(2015年)のFOCから実行委員に加わりました。実行委員として1年目である第10回展の2日目、第1回から10回までの10年間実行委員長を務めていた土岐さんに、「来年から実行委員長をしない?」と言われました。何杯目かわからないビールを握りしめてかなり酔っていらしたけど、本気のようでした。僕には想定外でかなり驚きましたが、3日ほど考えてやってみることにしました。想定外だったことも、引き受けたことも、僕のおっちょこちょいの成せる技だと思っています。これが僕がFOCの実行委員長になった経緯で、全くの出会い頭です。

以来、クラフトフェアとはなんぞや、FOCとはなんぞや、ということを真剣に考えるようになりました。実行委員長というのは、最終的に決める係であり、起こった出来事の責任を引き受ける係だからです。物事を決めるためにも、また責任を引き受けるためにも、自分が納得していなければなりません。

僕は働きはじめてからずっと不動産屋だったので、クラフトのことも、クラフトフェアのことも、本当に何もわかっていませんでした。でも、仕事でクラフトを扱い、FOCの実行委員として関わることが、なぜかとても楽しいのです。そして、クラフトの作り手の方たちには気が合う人が多い、とも感じていました。そんな時ふと思い出したのが、自分が高校3年生の夏に、大学に進学しようか、陶芸の訓練校のようなところに行こうか、という二択をしたことでした。結局は、大学に行ってからでも陶芸はできるか、と考えて大学に進学し、そんな二択があったこと自体もすっかり忘れてしまっていました。だからこそ、その事を思い出してからは余計に、もしかしたらこうなっていたかもしれない自分を見ているようで、勝手な親近感が湧くのです。

実行委員長になってから、いくつものクラフトフェアの会場に足を運んでみました。FOCの特徴は「使い手のためのクラフトフェア」だということです。FOCは、クラフトのファンと作り手の発案から、「ものづくりの魅力を伝えたい」という趣旨で立ち上げられました。第1回から、実行委員長をはじめ、実行委員のほとんどが作り手ではなく、今でも25名の実行委員の内、作り手は10名ほどです。ものづくりの魅力を子どもたちにも体感してほしいとの願いから、ワークショップがたくさんあり、出展する作り手の方にも、ただ作ったものを売るだけでなく、制作の背景がわかるような展示やミニワークショップなどの実施をお願いしています。使い手にとっても、作り手にとっても、楽しくて質の高いクラフトフェアでありたいと考えています。

有永さんの住む能登島にうかがったことはありませんが、写真や地図で拝見する限り、自然が豊かで海も近く、クラフトフェアの会場は広々として良いところだなあと思います。会場にいる事自体を楽しめる感じでしょうか? 「のて」の起こりや、どのようなクラフトフェアなのか、お聞かせいただけたらと思います。

2016年12月 冬本番を迎えた岡山より  宮井 宏

 

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