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【連載】 委員長 往復書簡 (4)

2017年03月16日

宮井宏さま

こんにちは。能登もようやく暖かくなってきました。インフルエンザ大変ですよね。うちでは僕以外の家族が全員罹ってしまいました。

クラフトの捉え方についてのお返事興味深く読ませて頂きました。「クラフト・工芸・アート・美術」 僕が作ることで関わるこれらの言葉について考えることがあるんです。僕は、自分の作るものが、クラフトとして、美術工芸として、視点が変わりアートとしてとらえられることもあり、クラフトとして作っているイメージはないんです。そんな中、クラフトのイベントに関わるようになり、こういったものを知ってほしいと思うようになり、僕が作ることで関わる「クラフト・工芸・アート・美術」これらの言葉を、受け手(使い手)、伝え手の方々がどう考えているのか、知りたいと思っているんです。

宮井さんおっしゃる「非日常ではなく、日常」というのはおもしろいですね。宮井さんの書簡を読んだ時が、ちょうど自宅に工房を作っている時で、まさに日常と制作が一緒になり始めた時でした。今、ようやく作業が出来るようになり、暮らしの中で作り、それが生活の糧になる、日常の中からモノが出来ていく環境はクラフトのイメージに近しいですね。それがクラフトフェアを支える一つの要素であるのはうれしいですね。

実際手を動かしながら考えていると、クラフトって「考えること」と「作ること」が一体になった連続した仕事なんだなと感じます。建築の仕事やデザインの仕事では、現場で作る人たちと、そのための設計をする人がいて、その二つの「こと」が分離しています。手工芸やクラフトは比較的仕事が個人の手の内にあり、それが出来たものにその人が見えるということになるんだと思います。

ただ、いわゆる世の中全般の日常の中には、クラフトではないモノが多いですよね。クラフトを知らない人にとってはそれが日常で、僕たちはそれとは少し違った日常もいいですよって言っているんじゃないでしょうか。

「クラフトフェアってどうあればいいんだろう?」 と考えていらっしゃるとのこと。その問いかけは、僕たちの場合、クラフトフェア「のとじま手まつり」以外の活動に繋がっているように思います。クラフトフェアとしての「のとじま手まつり」では収まりきらないこと、そこだけではできないことを実現するために、「のて活動」は始まりました。実行委員は、いろんな職業の人たちの集まりで、クラフトに直接かかわる仕事をしている人はほとんどいないんです。そういったメンバーで運営している内に、モノを作ること、それを伝えることをもっと知りたいという思いが出てきたんです。そこで、それを実践してきた先人の話を聞こう、せっかくなので興味のある人も一緒に、というのが「お話会」という形になりました。そこで話を聞いている内に、その方たちは自身を取り巻く「場」をしっかり作ってると感じたんです。そこで能登島ってどういうところだというのを能登の暮らしを通して知るという意味もあり、「のて農」や[ワークショップ」などの「のて活動」をするようになりました。

昨年の「のとじま手まつり」からは、クラフトではない能登に根ざした物づくりを、来場者だけでなく、全国から来てくれる出展者にも知ってもらいたいと、紹介するためのブースを作り、当日のイベントとして会場で「トークイベント」をしてみました。それは、モノを作ることと地域の営みとの繋がりを知ることが出来る、良い機会になりました。

自分達の知りたいこと、そこから生まれたやりたいこと、そして、できればそれを一緒に誰かと共有したい。「のて活動」は、そんな思いを一つずつ積み重ねています。作り手と使い手、そして伝え手。それぞれの立場でクラフトの楽しさを知る機会を、イベントを通して作っていければと思います。

「のて活動」と「のとじま手まつり」を通して能登の魅力を知ってもらい、いつか、クラフトが根ざし、作り手が移住してくるような場所に能登島がなればという思いで活動しています。年に一回、クラフトフェアとしての「のとじま手まつり」がいろんな地域の人たちを繋げる機能を果たしていきたいですね。「のとじま手まつり」が始まって10年が過ぎ、次の10年が経ったとき、この地域がどうなっているかを想像しながら、自分たちが楽しみながら、それぞれの思いを実現していける活動でありたいと思います。

フィールドオブクラフト倉敷のHPで、「10年ちょっと前のこと」という記事を読みました。宮井さんたちの、この先のイベントの在り方や、したいこと、こんなことが起こればいいな、ということがあれば聞いてみたいです。

そちらは、準備が佳境に入っているのではないでしょうか? 5月にお会いするのを楽しみにしています。

能登島より
有永浩太

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