10年ちょっと前のこと

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手探りで準備し、やっと開催に漕ぎ着けたフィールドオブクラフト倉敷(以下、FOC)。記念すべき第1日目は無情にも雨。気合を入れ直した2日目は、雨上がりの突風に、倉敷芸文館特有のビル風も加わり、春の嵐状態に(泣)。出店者のテントが飛ばされる、ガラスの器も木の器も飛ばされる。スタッフはテントの柱を持って重石になったり、飛ばされる作品を追いかけたり。しかも第1回目ですから、山のものとも海のものとも分からないクラフトフェアに訪れるお客さまも少なかった。終了後は、みんな疲れ果てて呆然とした状態でした。果たしてこれで続けられるのか!? だけど、作り手のみなさんの言葉に、実行委員の心は救われました。「野外のクラフトフェアで雨や風は当たり前。来年もぜひ続けてくださいよ。絶対にまた来ますから」 2006年の第1回展のことです。昨日のことのように覚えています。

「岡山でクラフトフェアを立ち上げたい」。
そんな声が上がったのは2003年頃。最初は立ち上げメンバーさえ集らない状態で、本格的に動き始めたのが2004年頃から。クラフトが大好きだから手弁当であっても携わりたいという情熱を持った人間が、少しずつ増えていきました。

クラフトフェアの存在すら、一般にはほとんど知られていなかった当時、メンバーでツアーを組み、クラフトフェアまつもとや丹波クラフトフェアの見学から始めました。その時、メンバーで共有したのは、緑あふれる空間で作り手と使い手が交流する、室内のギャラリー展示とは異なる、開放的なイメージでした。

場所の選定には時間をかけました。「緑の豊富な大きな公園」を探します。倉敷の桜の名所、酒津公園が候補に上がりましたが、アクセスの悪さと市の条例の規制がネック。知名度を重視して候補に上がった「アイビースクエア」は広さや企業との共催になることの難しさがネック。そこで登場したのが、今の倉敷市芸文館前広場でした。美観地区に隣接して駅からも近く、わずかですが緑の公園もあります。

会場が決まっても、まだまだ苦労が続きます。誰に出展していただくか? 岡山県内のベテランの作り手のみなさんに出ていただきたく声をかけますが、野外で展示することがイメージできなかったり、抵抗をお持ちだったり、なかなか了承が得られません。そこでクラフトフェアまつもとへ行って声をかけたり、作り手同士のつてを頼ってお願いしたりして、ようやく集まったのが50組くらいだったと記憶しています。

何より欠かせなかったのは、子どもたちのワークショップでした。これだけはたとえ持ち出しになろうとも、大きく場所を割いて質の良いものをやろうと決めていました。倉敷の街で民藝文化が伝えられているように、クラフトも次世代の子どもたちにつながっていってほしいとの願いからでした。

あれから11年。第一回展ではお母さんのお腹の中にいた子どもが、今や一人でワークショップを回り、いろんな体験をしています。「今年は何を作ろうかワクワクする」「難しいことを軽々とやって見せてくれる作家さんに感動したよ」と目を輝かせています。

風との戦いは今でもありますが、開催時期を風が少しでも弱まる5月に変更する、テントの設置場所を工夫する、テント自体を連結させて強固な作りにする、重石の準備を万全にするなどの工夫で乗り越えてきました。どの年も、よりよい FOCを目指して運営に力を注いでいます。

11年の間に実行委員メンバーの入れ替わりはありますが、「純粋にクラフトが好きだという有志」がFOCを作っていることには変わりありません。今も昔もクラフト好きが手弁当で支えるクラフトフェア。第12回目のFOCを、ぜひご自分の目で見て、参加して、そして一緒に作って行きましょう。

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【連載】 委員長 往復書簡 (3)

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有永浩太さま

こんにちは。寒いですね。能登は岡山よりもっと寒いんだろうと思います。1月に有永さんの「風邪などひかないように」という言葉が届いた日、僕はA型インフルエンザウィルスと一悶着やっておりました。今はすっかり元気です。

お返事を何度も読みました。有永さんが、大学で倉敷に来られてガラスと出合ったこと。縁あって能登島に移り住み、工房を持つに至ったこと。流れに逆らうことなく「のとじま手まつり」の実行委員長を引き受けられたこと。けっして利便性が良いとは言えない場所で、初心どおりガラス作品を作って生計を立て、クラフトフェアを開催し、地域の人を巻き込みながら生活を楽しんでいらっしゃること。素晴らしいなと思いました。

「宮井さんにとってクラフトとは、どんなふうにとらえられているものなのか」、というご質問をいただいていましたね。25歳から不動産屋になった僕は、フィールドオブクラフト倉敷のことすら、会社でクラフトを取り扱いはじめる5年前まで知らなかったような人間です。そんな素人がまず理解したクラフトとは、生み出された物というよりも、物が生み出されるプロセスであり、まさに有永さんが実践されている暮らしそのもの、ではないかと。

クラフトの制作は、プロセスのほぼ全てが個人の手作業でなされています。作り手は自らの技術とセンスを磨き、生まれてきたものをブラッシュアップし続け、自らの手で納得のいく暮らしの道具を作る。それを使い手に見てもらい、共感して買ってもらい、それによって生計を立てる。この一貫して手触りのある暮らしのプロセス全体が、僕にとってのクラフトのイメージとしてあります。それはクラフトとの出会いが、クラフト作家との出会いと同時だったからかもしれません。

日々の営みの中から生み出されるクラフト作品から感じるのは、作り手の意図、配慮、手跡、息づかい、悩み、ゆらぎ、偶然性といったものです。クラフト作品の周りにもやもやと湯気のようにたちこめる意味の世界は、材料、制作方法、道具といったクラフトへの知識を深めることで増し、使っているあいだの関わりの中でも増していきます。そして何よりも、作者本人を知ること。例えば、有永さんと直接話をしながらグラスを買った人は、使うときには必ず有永さんの顔が浮かぶはずです。

クラフト作品と美術工芸、両者が異なる点は、日常生活の中で使うか否かということではないかと思っています。高級料亭やリゾートのような非日常ではなく、よく行く喫茶店や定食屋のような身近な存在、それがクラフト。毎日のように関わった結果として、意味のもやもやをたくさん身にまとった物は、物でありながら親しい人が近くにいるみたいな存在になります。

先のお手紙で、「初めてクラフト作品を買って、買い足して、自分の生活に増えていく中で、今までと違った価値観っていうものが広がっていく」、そうした実感を伝えたい、と有永さんは書かれていました。「今までと違った価値観」とは、そうした物との親密な関係性を大切にしたり、衣食住といった毎日の生活のベーシックな部分の手触りの確かさを大切にするような価値観ではないでしょうか。僕にとってのクラフトのイメージは、そのような物や生活との関わりそのものです。

作り手としての有永さんは、ご自身の暮らしと作品を通して、クラフト的価値観を体現されています。そして、地域の人にクラフトのある暮らしを知ってもらう、能登の暮らしを知ってもらう、そうした価値観を共有する人が地域に増えていったらいいなと思っている。作り手であるだけでなく、伝え手にまでなっていらっしゃいます。

僕は、初めは伝えられる側だったわけですが、「今までと違った価値観」が外から入り込んできた、というよりは、自分の中に眠っていたものをゆすり起こして再発見させてもらったような感覚です。気がついたら伝え手と呼ばれる立場となった今、「クラフトのある暮らしの魅力」を伝えるために、クラフトフェアってどうあればいいだろう? と、ずっと考えています。

先のお手紙で触れられていた、能登の暮らしの実践や紹介、作り手や使い手の話を聞く「のて活動」や、産業として物づくりを続けていらっしゃる方達と関わる取り組みについて、もう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか? フィールド オブ クラフト 倉敷の私たちにとっても、大切なヒントがあるような気がしています。

それではまた。インフルエンザなどに罹患されませんようお過ごしください。
2017年2月 深夜の不動産屋の事務所から
宮井 宏

 

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DMのデザイン

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1年間かけて準備を進める、フィールド オブ クラフト 倉敷(以下FOC)。この時期、DMや会場サイン制作の準備が始まっています。

FOCに来ていただいたことのあるみなさんならきっと目にしたことのある、クラフト作品をモチーフにしたイラストレーションは、岡山在住のデザイナー・大塚啓二さん(ブラボーデザイン室)によるもの。第2回展から、DMやポスターの印刷物をはじめ、会場サイン(写真)などのグラフィックデザイン全般をお願いしています。やわらかな曲線から成るアートワーク、「掌から生まれるかたち」は、クラフトだけではなく大塚さんのデザインも同じなのかもしれません。

DMとポスターは、岡山県内はもとより全国で3月上旬配布予定です。どうぞお楽しみに!

FOC文庫

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フィールドオブクラフト倉敷(以下FOC)の会場の片隅に、本屋ブースがあります。その名は「FOC文庫」。第7回展から登場したFOC文庫には、クラフトにまつわる書籍や絵本が、ずらりと並びます。

「普段は、どこに本屋があるんですか?」毎年、質問をいただきますが、実はどこにもありません。5月の2日間だけ倉敷に出現する、夢のような本屋です。

どんな本をご用意しよう? 1年をかけて行う選書作業の中で、担当者はいつも同じ問いに行き当たります。「クラフトって、何だろう?」 禅問答のように悩ましくも愉しい時間を経て、毎年5月を迎えます。

技法書だったり、器の本だったり、はたまた酒とクラフトの本だったり。大人の方も、小さなひとも、うれしそうに本を選んでくださる姿を見るのは、何よりうれしい瞬間です。昨年のFOCでは、FOC文庫めがけて、まっしぐらに走ってきた女の子がいました。向かった先は、『ヒツジの絵本』。「向こうのブースに、羊毛を紡いでいるひとがいますよ」 そっと教えると、ヒツジが大好きという彼女、本をかかえてうれしそうに走っていきました。

本の流通には、いろいろ難しいこともあります。多様な出版社から刊行されている本を、一堂に集めるには、プロの力をお借りしなくてはなりません。FOCでは、地元岡山にある紀伊國屋書店 クレド岡山店のご協力で、私たちが選んだ本を手配していただき、2日間会場で販売しています。

作り手のみなさんが、手とこころと時間をかけて、クラフト作品をうみ出すように、一冊の本が、クラフトへの想いや愛情を、ゆっくりと広げてくれますように。お気に入りの一冊を探しに、今年もFOC文庫へお立ち寄りください。

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サポーターのみなさんのこと

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フィールド オブ クラフト 倉敷 (以下FOC)の中でも、ひと際いろんな音がする場所、ワークショップブース。大きなテントをのぞいてみると、参加者の方にまじって名札を首からぶら下げた人たちが、たくさんいます。ワークショップ担当の作り手のみなさんを支える、サポーターの方々です。その数、2日間でおよそ100名。毎年、社会人の方や地元の大学・専門学校の学生のみなさんに協力してもらっています。サポーターの支えがなければワークショップ、いやFOCは成り立たないのです。

サポーターのみなさんは、どんなことをしているのでしょう? まずは受付。ワークショップの内容を紹介したり、サンプルを手にどんなものが作れるのかを説明します。各ブースでは一度に参加できる数・予約の可不可などの違いがあるのですが、できるだけたくさんの方に参加して頂けるよう、待ち時間をお伝えしたり、他のブースを紹介することもあります。

それから作る前の準備があります。朝早い時間からサポーターは集まり、作り手の方から直接作り方の指導を受けます。材料選びや道具の使い方、してはいけないことなど、直接レクチャーを受けることで意思疎通がうまれ、その後も作り手とコミュニケーションが取りやすくなります。ブースの中では、作り手もサポーターも、同じように手を動かしてものを「作る人」なのです。

そして実際にワークショップがはじまると、手順やコツを伝えたり、時にはこどもたちと一緒に悩んだりしながら、作る喜びを共有します。うまくいくときも思ったようにできない時もありますが、素材から形がうまれて作品にかわっていくさまは、ただただ感動です。

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FOCでは、他にもさまざまなところでサポーターが活躍しています。例えば飲食ブースでの配膳や接客。いつも行列ができるその先では、エプロンをつけてきびきびと動くサポーターの姿があります。そして会場内の記録撮影。FOCがはじまって以来、ずっと撮っている記録写真。その撮影も、すべてサポーターの力によるものなのです。

休憩時間には、ふうと息を抜いてみんなでお弁当タイム。他のブースの様子を聞いたり、出展作家さんのどの作品が気になるとか、次の休憩時間に一緒にまわろうとか情報交換したり。みなさん思い思いに楽しまれています。

2017年のFOCは、ワークショップで体験できるジャンルも増える予定です。サポーターでなければ味わえない、さまざまな体験をしてみませんか。4月頃、サポーターの募集をはじめます。わたしたちと一緒にFOCを作り上げていきましょう!

【連載】 委員長 往復書簡 (2)

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宮井宏さま

こんにちは。のとじま手まつり実行委員会(のて)実行委員長の有永浩太と申します。本当にお会いしたのは、偶然でしたね。実は昨年、フィールドオブクラフト倉敷を見に行ってたんです。その数ヶ月後に、まさか実行委員長とお会いするとは思ってもいませんでした。しかも同い年とは。縁を感じますよね。

僕は、石川県の能登島を拠点に、吹きガラスの作家として活動をしています。吹きガラスをはじめたのは倉敷で、当時出来たばかりの倉敷芸術科学大学でした。そこでの小谷眞三先生との出会いが、僕が今作り続けている上での一つの指針になっています。在学中に、いつか自分の工房を持つことを決めて、そのための経験を積むために各地の工房で働きました。福島県、東京の新島、その後今住んでいる能登島に移り住みました。そこで、のとじま手まつり前実行委員長の田口さんと出会ったんです。その後、仕事で金沢に移りましたが、2016年4月、能登島に自分の工房を持つために再移住しました。

実は、最初に能登島に移った時には、クラフトフェアというものを、よく知らなかったんです。ガラス作家として駆け出しで、とにかくいろんなところに出してみようと思いはじめた頃だったんですね。その時に田口さんや、のとじま手まつりに関わる人達と出会い、出展しながら、実行委員としても関わるようになりました。それを5年続け、能登島に移る2016年になって、田口さんから実行委員長をしないかと言われました。正直、僕は作り手で、運営に関しても分からないことが多いくらいだったんですが、のとじま手まつりも10年を越え、これまでの10年から、これからの10年へ転換して行きたいという思いが強くなってきたことと、僕自身の環境の変化のタイミングが合ったといいますか、なんとなく予感があったと言いますか、引き受けてしまったんです。

のとじま手まつりがはじまったきっかけは、地元で作家を目指している人達が作品を発表できる場を作りたいというものでした。手まつりを通じて地域の人にクラフトを知ってもらい、将来クラフト作家が移住して来るような土壌を作れたら、という思いもありました。能登島のWeランドというキャンプ場でのイベントは、アクセスが良いとは言えない場所で、当初は閑散としていたそうですが、それでも、来場者も出展者もスタッフもこの会場での手まつりがすごく楽しくて、満足感と充実感がめちゃくちゃあったんですって。まさに会場にいること自体を楽しめる、このロケーションの良さというのが最大の魅力であり、モチベーションを保ち続けられている要因なんです。

10年を経て、のとじま手まつりについて、改めて話す機会を持ったんです。そこで出てきた話なんですが、手まつりに関わることで、身近にクラフトのある暮らしが出来ているということが、形になってきている。と感じられて、それがとても貴重なことだと思えるんです。専門的な知識を持ったものがいるわけでもないですし、仕事としてクラフトに関わっているものも少ないのですが、自分たちがそうして実感したことを共有したい、伝えたい、という思いが強くなってきたと感じたんです。

初めてクラフト作品を買って、買い足して、自分の生活に増えていく中で、今までと違った価値観っていうものが広がっていくかもしれない。手まつりが、その「最初の一個」のきっかけになれたら嬉しいですし、暮らしにクラフトが入っていく場となっていけたらいいですね。そして、毎年この会場が、それを確かめられる場としてありたいと思います。

それと、毎年試行錯誤をしながらですが、クラフトフェア「のとじま手まつり」とは別に、「のて活動」と称して、能登の暮らしの実践や紹介、作り手や伝え手の話を聞く会を催したりもしています。地元の人たちにクラフトを日常的に知ってもらうこと、能登以外の人たちに能登暮らしを知ってもらうこと、そして将来、作り手と使い手が共にこの地域に増えていけたら、と思っています。その一貫として、2016年から新たに、能登に根ざしたモノづくりを知ってもらう試みをはじめました。クラフト作家ではなく、産業として作り続けている方達に出展していただき、話を聞く機会を持ちました。出展してくださる作家の方も、日本各地から来てもらえるようになってきて、その人達と能登のモノづくりが出会う場として、のとじま手まつりが機能できればいいなと思っています。

僕自身が、2016年から能登でのモノづくりをはじめることにしたわけですが、すごく魅力的な場所なんですね。ここで出来ることを作り手の立場から、少しづつでも伝えられたらと思っています。

僕と宮井さんとは、共感できる部分が多いと思いますが、作り手と伝え手と言いますか、クラフトへの関わり方が全く別の方向からなんですよね。それなのに偶然同じタイミングで同じような立場になった宮井さんに興味を持ちますし、だからこそクラフトやそれを取り巻くことについて話してみたいと思ったんです。

僕はガラスという素材を使って、日常の器も作りますし、美術工芸品というような作品も作ります。ガラスをどうすれば日常の中に取り入れていけるか考えたり、ガラスを通してどんな表現ができるかを考えながら制作を続けています。そんな中で作品は、クラフト、工芸、民藝、ガラスですとグラスアート、いろんな呼ばれ方をしますが、それはどんなふうに知られていることなんだろうか? どんなふうに伝えられるんだろうか、と考えたりします。クラフトフェアに関わる者としても、作り手としても、クラフトという言葉のイメージがどのようなものなのか気になるところなんです。

宮井さんにとってのクラフトというのは、どんなふうにとらえられているものなのか、お聞かせいただきたいと思います。お忙しいとは思いますが、風邪などひかれませんようお過ごしください。

2017年1月 能登島より
有永浩太

 

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倉敷とワークショップ

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倉敷は民芸の街。日々使うものを昔から自分たちで作り、そこに用の美を求める土地柄。作ったものを絶やさず、次の世代に伝え、作り、使い続けていくという土壌があります。

これから毎日の相棒となるものを見つけよう! フィールド オブ クラフト 倉敷 (以下FOC)の会場には、そんなワクワクした表情の方が、たくさんいらっしゃいます。楽しそうな大人たちと一緒にやってくる子どもたちにも、クラフトを楽しんでもらえたら。大量生産・大量消費の時代の中で、それはクラフトの未来をつなぐきっかけになるのではないか? と、私たちFOCは考えてきました。

そのため、FOCでは出展者ブースとは別に、大きなワークショップブースを設けています。緑が美しく、風が抜ける会場内の一角で、子ども達に「作ることの楽しみ」「自然素材のあたたかみ」を感じてもらう場所、それがFOCの「ワークショップ」です。

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大量消費の現代では、モノは工場で機械が作るもの、と思っている子どもたちが多いと聞きます。そんな中、FOCに出展して下さる作り手たちが、作品の一つ一つを思いを込めて身近な素材を使って作っていることを目の当たりにして、子どもたちは驚きの声をあげます。でもこの驚きこそが、記憶のポケットの1つになるものだ、と私たちFOCは確信しています。

モノが作られる過程を、実際に体験すること。そこには創意工夫があって、どれだけの手間がかかるのかを感じること。自らの手を動かしてみることで、使い捨てではなく、大事に長く使おう、という気持ちになるのは、大人も子どもも自然なことなのかもしれません。

FOCでは、例年たくさんのワークショップブースをご用意しています。木工、陶芸、ガラス、革、いぐさ等々。毎年、どのブースもたくさんの子どもたちでにぎわいます。目をキラキラ輝かせる子。お母さん、お父さんとあれやこれや相談しながら作る子。全部自分で作りたい!と意気込む子。そんな子どもたちの「作りたい」気持ちに応えるべく、ワークショップ担当の作り手のみなさんは、試行錯誤を重ね、小さなお子さんから小学生が楽しめるものまで、準備万端で会場入りして下さいます。

ひとつお願いがあります。会場で作ったものを、日常生活の中で、毎日使ってみてください。記念にしまっておくのは、もったいない! ご家庭で大事に使い続けていくこと、それこそが、大人から子どもへ、クラフトという名のタスキを未来につなげることになると思います。

2017年5月のFOCでは、これまでより少しパワーアップしたワークショップをご案内できそうです。たくさんの子どもたちにお会いできることを、楽しみにしています。2016foc_w2_01_ic

【連載】 委員長 往復書簡 (1)

倉敷と能登島。瀬戸内と日本海。遠く離れたふたつの場所で、ふたつのクラフトフェアが、時を同じくして誕生しました。それぞれのクラフトフェアを率いるふたり、宮井宏(フィールド オブ クラフト 倉敷実行委員長)と、有永浩太さん(ガラス作家。能登島クラフトフェア実行委員長)が、クラフトフェアについて想いを語る、「往復書簡」。だいたい月に一度の連載、はじまります。

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有永浩太 様

こんにちは。フィールド オブ クラフト 倉敷 実行委員会(以下「FOC」)・実行委員長の宮井です。
有永さんとは2回お会いしています。1度目は2016年の7月。岡山市内で開催された有永さんの個展の際に、FOCの事務局となっている僕の職場にお越しいただきました。本がお好きで、立ち寄られた「スロウな本屋」さんのご近所だったという、全く偶然の流れでした。個展には残念ながらうかがえなかったのですが、作品を幾つか拝見し、その技術の高さとセンスの良さに魅了されました。その時購入したぐい呑で、おいしくお酒をいただいています。2度目は、4か月後の11月。「灯しびとの集い」の会場で、偶然にばったり出会いました。あれだけ人のいる中ですから、縁があるとしか言いようがありません。

僕と有永さんには、いくつか共通点があります。まず、お互いに1978年生まれであること。同じ年月を重ねてきた同士のような感覚が勝手に芽生え、僕にはこれが一番グッときます。そして、僕はFOCの実行委員長を、有永さんは石川県で能登島クラフトフェア「のて(のとじま手まつり)」の実行委員長を、それぞれ第11回から務めることになったこと。そんな有永さんだからこそ、いろいろお話をうかがってみたくなりました。

まずは自分の話からはじめたいと思います。僕は25歳から、父親が一人で営む小さい不動産屋を手伝いはじめました。今では9人ほどの働く会社になりましたが、目の届く範囲で地道に仕事をしています。5年ほど前から本業のかたわら雑貨屋をはじめ、クラフトを取り扱うようになりました。その繋がりで第10回展(2015年)のFOCから実行委員に加わりました。実行委員として1年目である第10回展の2日目、第1回から10回までの10年間実行委員長を務めていた土岐さんに、「来年から実行委員長をしない?」と言われました。何杯目かわからないビールを握りしめてかなり酔っていらしたけど、本気のようでした。僕には想定外でかなり驚きましたが、3日ほど考えてやってみることにしました。想定外だったことも、引き受けたことも、僕のおっちょこちょいの成せる技だと思っています。これが僕がFOCの実行委員長になった経緯で、全くの出会い頭です。

以来、クラフトフェアとはなんぞや、FOCとはなんぞや、ということを真剣に考えるようになりました。実行委員長というのは、最終的に決める係であり、起こった出来事の責任を引き受ける係だからです。物事を決めるためにも、また責任を引き受けるためにも、自分が納得していなければなりません。

僕は働きはじめてからずっと不動産屋だったので、クラフトのことも、クラフトフェアのことも、本当に何もわかっていませんでした。でも、仕事でクラフトを扱い、FOCの実行委員として関わることが、なぜかとても楽しいのです。そして、クラフトの作り手の方たちには気が合う人が多い、とも感じていました。そんな時ふと思い出したのが、自分が高校3年生の夏に、大学に進学しようか、陶芸の訓練校のようなところに行こうか、という二択をしたことでした。結局は、大学に行ってからでも陶芸はできるか、と考えて大学に進学し、そんな二択があったこと自体もすっかり忘れてしまっていました。だからこそ、その事を思い出してからは余計に、もしかしたらこうなっていたかもしれない自分を見ているようで、勝手な親近感が湧くのです。

実行委員長になってから、いくつものクラフトフェアの会場に足を運んでみました。FOCの特徴は「使い手のためのクラフトフェア」だということです。FOCは、クラフトのファンと作り手の発案から、「ものづくりの魅力を伝えたい」という趣旨で立ち上げられました。第1回から、実行委員長をはじめ、実行委員のほとんどが作り手ではなく、今でも25名の実行委員の内、作り手は10名ほどです。ものづくりの魅力を子どもたちにも体感してほしいとの願いから、ワークショップがたくさんあり、出展する作り手の方にも、ただ作ったものを売るだけでなく、制作の背景がわかるような展示やミニワークショップなどの実施をお願いしています。使い手にとっても、作り手にとっても、楽しくて質の高いクラフトフェアでありたいと考えています。

有永さんの住む能登島にうかがったことはありませんが、写真や地図で拝見する限り、自然が豊かで海も近く、クラフトフェアの会場は広々として良いところだなあと思います。会場にいる事自体を楽しめる感じでしょうか? 「のて」の起こりや、どのようなクラフトフェアなのか、お聞かせいただけたらと思います。

2016年12月 冬本番を迎えた岡山より  宮井 宏

 

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会議とおやつ

フィールド オブ クラフト 倉敷(以下FOC)実行委員会の全体会議は、毎月1回。事務局、会場、広報、ワークショップ、ボランティア、飲食、会計、駐車場、交流会、FOC文庫、web準備、とそれぞれの部会で集まる事もあり、担当をかけもちしていると、ひと月のうち何度もFOCの会議に時間を費やす委員もいます。おつとめをしている人も多いので、スタートはたいてい午後6時から。仕事を早めに終わらせてあわてて滑り込むと、本当におなか減るんですよね。大事な話し合いの緊迫した場面でぎゅるるるる〜なんて音を響かせようものなら、一見クールな宮井委員長にここぞとばかりに突っ込まれることは明白です。そんな我々を救ってくれるのが、おやつ。

話し合いが煮詰まってきた頃合いで、誰かがテーブルのおやつをゴソゴソ、まわりにも勧めて、それをきっかけにちょっと息抜きになることもあります。だれかのお土産だったり、お裾分けだったり、差し入れだったり。わたしは、そうやって頂いたおやつが美味しいと、テンションがあがります。あのおやつは、紅茶とコーヒーどっちで頂こうかな。どのカップ使おうかな。小さなことですが、ちょっとした幸福感をもたらす作用があるのが、おやつ。たまに、なにか差し入れしようかな〜? なんて気持ちになるのは、きっと委員会メンバーたちと一緒に、小さな幸福感を味わいたいから、なんだと思います。
(飲食担当:S)%e4%bc%9a%e8%ad%b0%e3%81%a8%e3%81%8a%e3%82%84%e3%81%a4%e3%80%80%e7%94%bb%e5%83%8f

新ホームページ準備中!

フィールド オブ クラフト 倉敷 実行委員会(以下FOC)では、来年の12回展に向け、7月から着々と準備を進めております。新たな試みの一つが、ホームページのリニューアルです。

ホームページ、ブログ、SNS、スマホ、タブレット・・・。多様化するメディア、情報発信ツールを、私たちFOCは上手く使い熟せているのか? 求められる情報を適切に発信できているのか? トライアル&エラーを繰り返しながら、よりよいホームページになればと、日夜検討を重ねています。

出展作家の手仕事に「触れること」、ワークショップを通じて「体験すること」、FOCカフェで実際に「使ってみること」、FOC文庫の書籍で「深めること」。毎年5月の2日間で、FOCが伝えたいこと、感じて欲しいと願うこと。今回のリニューアルで、それらをもう少しだけ丁寧に、深く、時には角度を変えてご紹介してゆければと考えています。

新しいホームページは、2017年春、始動予定です。ご期待ください。

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