手仕事の風景2014 【革】 谷口 桐吾

岡山県津山市で「青桐(あおぎり)革工房」を構える革作家の谷口桐吾さん。今年、フィールドオブクラフト倉敷に初出展、クラフト展自体も初めての参加だったそうですが、「革のおかげで、お客さんと仲良くなれました。〝これ、いいですね〟と言って下さって、うれしい。作り手も使い手も〝革が好き〟という共通点があるからか、話が弾みます」と静かに微笑みます。

 

 

 

 

学生時代、美術大学で家具といすのデザインを学び、卒業後、ソファやいすの試作を行うモデリング会社に就職。働き始めて、素材としての〝革〟を身近に感じるようになり、「革でものづくりをしたい。最初から最後まで自分でやってみたい」という思いが、作家への道しるべにつながります。

 

 

その思いを胸に、東京・浅草の皮革会社に転職し、洋服のベルトを制作。一方、プライベートでは、革のトレイの試作を続けていたものの、進むべき道が見えないままでした。転機が訪れたのは、鳥取で作陶する陶芸家の個展に行ったときのこと。谷口さんのご両親が知り合いで、谷口さん自身は初対面だったという陶芸家に試作品の革トレイを見せると、「一緒に合同展をしないか。鳥取に来て、私の近くに住むことができるのなら、作家としてのいろはを教えてあげるよ」と声を掛けられたのです。

 

意を決して、東京での生活を引き払い、鳥取でゼロからスタート。教えを請いながらも、合同展に参加することができました。1年後、岡山に戻り、革工房を立ち上げることに。「浅草で働いていたころに巡り合ったのが、イタリア・フィレンツェの革。〝探していたのは、この革だ!〟とピンとくるほど、ツヤやハリ、厚み、牛の皮膚の模様が理想的でした。この革に合うものを作ろうと、独立することにしたんです」。現在はバッグやポーチをはじめ、フォトフレーム、ペンケース、ノートカバー、小物入れなどを制作しています。会場にも美しくレイアウトされていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テント内には、ミニワークショップ「革のコバ磨き」が体験できるスペースも。素材は工房で使用しているものと同じ、植物タンニンなめしの牛革です。大きさはコースター程度ですが、一枚革の切り口に当たるコバ面に水だけを付けて、堅木の木片で磨き作業をしていくというもの。ある程度、磨き続けると、ツヤが出て光ってきます。

最近の量販品でよく使われている革は、化学薬品(塩基性硫酸クロム)でなめし処理をしている場合が多いので、磨いても変化がないのだとか。「私自身、一番好きな作業がコバ磨きです。少しずつ光沢が出てきたり、表面がなめらかになってきたりする様子を、手で確かめることができるから。この工程を通して、お客さんに革本来の魅力を感じてもらいたいと思い、企画しました」と話します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、「革の良さを引き出せるよう、素材の声を聴きながら仕事をしていきたい。これからは、家具やインテリアアイテムにも挑戦したいですね」とも。作品のそばには、自身で張り替えたという、イームズのいすが谷口さんを見守るように佇んでいました。